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助成・補助事業

高齢者虐待対応帳票の活用について

権利擁護事業委員会
虐待対応ソーシャルワークモデル研究会

 虐待対応は、利用者の依頼に基づくソーシャルワークと違って、虐待を受けている被虐待高齢者の生命・身体・財産を保護し、安全で安心な生活を再構築するための積極的介入支援です。このため、虐待対応には判断の根拠と支援方針を明確にしした上で、市町村を責任主体とする虐待対応協力機関がチームとして対応するシステムを整備することが重要になります。
本会は、虐待対応協力機関に従事する社会福祉士の実践力を向上させる目的で、虐待対応をシステム化するツール、具体的には、虐待対応の各段階での情報の整理、対応の根拠や方針の明確化、共有化、対応過程の記録化のツールとしての帳票の開発を行いました。
帳票開発の検討経過においては、厚労省マニュアルや東京都等先駆的自治体で開発され使用されている帳票を参考にするとともに、高齢者虐待対応ソーシャルワークの視点を具体化することおよび「現場で使えるもの」を第一目標としました。帳票は下記からダウンロードができますのでご活用ください。
これらの帳票は完成されたものではなく、今後の実践の中でさらに改良を加えられるべきものですので、研究会において引き続き検証し、改良を進めていきます。

帳票のねらいと効果
帳票の構成と相互の関係
帳票活用のポイント


○ 高齢者虐待帳票の種類

  • 相談・通報・届出受付票(A票)
    高齢者虐待受付票(B票)
    事実確認票―チェックシート―(C票)
    アセスメント要約票(D票)
    高齢者虐待対応会議記録・計画書
    ~コアメンバー会議用~ (E票)
    高齢者虐待対応ケース会議記録・計画書(E票)
    高齢者虐待対応評価会議記録票(F票)
高齢者虐待対応帳票(一括ダウンロード)Excel版 帳票類の活用イメージ(流れ図) PDF版

○ 帳票記入のポイント

帳票記入のポイントをまとめています。下記からダウンロードしてお読みください。

記入のポイント(一括ダウンロード


高齢者虐待対応帳票について

帳票のねらいと効果

本帳票は、虐待対応ソーシャルワークの視点に立って虐待対応構造化するとともに、「現場で使えるもの」を第一の目標とした。

①標準化
虐待対応機関においては、組織として虐待対応の仕組みをつくりあげることが重要である。 帳票は、虐待対応のプロセス全体を見通した虐待対応に必要な枠組みを標準化する上で必要不可欠である。帳票の使用をつうじて、各段階で行うべきこと、おさえておくべきこと、その手順が明確になり、あるいは見落としを防ぐことができる。帳票は、経験や勘に頼るのではなく、誰でも同じ状況ならば同じように対応できるようにすることができるように作成されている。

②明確化
虐待対応の各段階では、虐待の有無や緊急性の判断、保護分離など支援方針の決定、終結の判断などさまざまな判断、決定が求められるが、その判断の根拠を明確にすることが重要になる。そのためには、集まった情報はどのようなものか、方針をいつ、どのような場で決定したのか、その根拠は何かなどのことが明確にされる必要がある。 帳票は、この虐待対応の各段階の判断、決定のプロセスと内容を明確化し、それを記録し、後に検証できるものとすることができるように作成されている。

③共有化
多様な背景をもつ虐待に適切に対応するためには、市町村を責任主体とする多様な機関によるチームアプローチが必要である。通報受理、市町村担当課と地域包括支援センターとの連絡協議、各種会議での方針決定などの一連の過程をチームとして行うには、正確な情報が共有化される必要がある。また、虐待対応においては個人情報保護との関連が問題になるが、高齢者本人の生命・身体・財産の保護を目的とする虐待対応のために共有すべき情報の集積と管理が重要になる。  帳票は、関係機関がさまざまな情報を共有し、その情報を管理することが可能となるよう作成されている。

帳票の構成と相互の関係

(1)帳票の構成

【相談・通報・届出受付票】A票

  • 相談・通報・届出受付票は、総合相談を受けていて対応者が「これは虐待ではないか」と気づく場合など、相談業務をする中で、いかなる場合にも虐待(予防)対応が必要であるかどうかを見過ごさないことを目的としている。虐待対応の必要な相談である場合は高齢者虐待受付票B票に移行することになる。

【高齢者虐待受付票】B票

  • 高齢者虐待受付票B票は、相談受付のなかで虐待の可能性がある場合にその内容を記載するとともに、行政担当者に連絡し、情報収集の依頼、事実確認の方法や期日、役割分担を明確にすることを目的としている。今後の初動期対応を確実に展開していく準備をするための帳票といえる。

【事実確認票―チェックシート―】C票

  • 事実確認票―チェックシート―C票は、B票での役割分担に基づいてどのような事実があるのかを把握し、その結果を記入することを目的としている。C票はリスクアセスメントシートを兼ねており、虐待の有無や緊急性の判断を行う際の根拠となる。

【アセスメント要約票】D票

  • アセスメント要約票D票は、C票で確認された「虐待の事実」から、虐待発生の要因分析を行ううえで必要な情報の集約・整理・精査を行うことを目的としている。D票を活用することで虐待の状況や対応に必要な情報が集約・整理される。会議において帳票の内容を共有し、虐待解決に向けた総合的な対応方針、対応課題とその解決方法について検討することになる。

【高齢者虐待対応会議記録・計画書~コアメンバー会議用】E票

  • 高齢者虐待対応会議記録・計画書~コアメンバー会議用E票は、通報・相談、事実確認において把握した事実に基づき、虐待の事実・緊急性判断を行い、初動期の対応方針を検討・決定していくことを目的している(会議録も兼ねる)。

【高齢者虐待対応ケース会議記録・計画書】E票

  • 高齢者虐待対応ケース会議記録・計画書E票は、D票で集約された情報から課題の抽出を行い、コアメンバー会議の緊急対応以後の支援計画を立案することを目的としている(会議記録を兼ねる)。

【高齢者虐待対応評価会議記録票】F票

  • 高齢者虐待対応評価会議記録票F票は、E票の計画にあげられた課題に対する取り組みがどの程度実施できているかの評価を行い、ニーズの変化を把握し、計画内容の変更の必要性について確認することをくりかえしながら、常に虐待対応の終結を確認することを目的としている。(会議記録を兼ねる)。

(2)虐待対応の流れと各帳票の関係

帳票は、虐待対応の一連の流れに即して作られている。虐待対応と帳票の関係を整理したものが「高齢者虐待対応の各段階における帳票類の活用イメージ(図表)」である(なお、この図表は委託型地域包括支援センターを想定している)。
帳票を活用するうえで、各帳票が虐待対応のどの段階で作成され、それがつぎのどの段階に流れるのかをつかむことはとても重要である。

【事実確認票―チェックシート―C票とアセスメント要約票D票

  • 初動期
    虐待の可能性がある場合、緊急性の判断を行うために、事実確認を行う。その収集した情報については、C票D票に記載していく。
    初動期において、まずはどのような情報を収集すべきか、面接を行う際どのような点に留意すべきか、訪問する際どのような点を観察するのかについては、B票の【情報収集依頼項目】や「事実確認項目(サイン)」C票-裏の縦欄「身体の状態」「生活の状況」「話の内容」「表情・態度」「適切な支援」「養護者の態度等」を参考にするとよい。ただし、医師のカルテや数量化できる項目、言葉や行為など、誰からも確認にできる項目以外の「おびえている」「ひどい汚れ」など、確認者側の認識が影響するものについては、日常から担当行政、地域包括支援センター職員らコアメンバー間において、どのような状況であれば、「汚れている」「怖がっている」とするかなど、確認できる場を設けておくと、判断する際に混乱が少ない。
  • 評価時
    計画を評価する際に、C票D票を活用する。
    会議において、評価票の課題ごとの目標に向かって、あらかじめ役割を分担した内容について、どの程度実行できたかという経過を記載する。できるかぎり、「いつ」「なにを」「どのように」行ったのかを記載する。
    その結果、計画の見直しの必要性ならびに、目標達成、虐待の事実の解消等を確認していく。その際、目標が達成されているか否か、虐待の事実が解消しているか否かの紺教は、取り組みの経過だけではなく、C票D票にて、各項目に事実が確認されないようになったなどを客観的に確認できることが重要である。
  • 虐待発声の要因・背景
    「なぜ虐待が起こったのか」という点については、各事実だけを点として認識しているだけでは十分ではない。それぞれの除法の関係を確認することは不可欠となる。そのために、D票の特に「高齢者本人の希望」「性格上の傾向、こだわり、対人関係等」「エコマップ」「養護者の希望」「家族関係」「その他」「全体のまとめ」欄が参考となる。

【高齢者虐待対応会議記録・計画書(1)及び(2)E票

  • コアメンバー会議用
    コアメンバー会議は、主として、行政担当者及び地域包括支援センター職員が、このケースに関してはじめて一同に集まり、事前に役割分担し、収集した情報を共有化する場となる。
    この計画書(1)E票は、コアメンバー会議録機能ももっていることで、誰か一人が担当者として計画を立案するということではなく、会議参加者の合意で作成していくことになる。特にコアメンバー会議は、初動期でもあり、計画案作成の時間も十分確保できないと考えられるため、場合によっては「白紙」の状態で会議に持ち込み、B票C票をふまえながら、一つひとつの項目を決定、記載し、仕上げていくことが望ましい。
    万が一、判断を行うのに「事実」の量が十分に確保できていない、特に被虐待高齢者、はじめ虐待者(養護者)に面会することができていない状態のときは、今後も事実確認を行える見込みがまったくないのかなどを十分に確認し、「立入調査」の必要性もあわせて検討することになる。
    →「緊急性の判断」で「事実確認を継続」ならびに、「総合的な支援方針」に「○月○日○時まで、再度契約書(2)E票に基づき、事実確認を行うが、その結果、高齢者への直接面会あるいは、医療機関による客観的情報が得られなければ立ち入り調査において、高齢者の安全を確認することを予定。その際、緊急対応が必要な可能性がある場合には、警察及び消防への協力依頼を同時に行う。」等を記載する。
  • 2回目以降
    コアメンバー会議後、さらに追加された情報を基に、D票を十分に活用する必要がある。特に、コアメンバー会議では、情報が不十分ということ、具体的には、「事実確認が十分できていない」「被虐待高齢者や虐待者(養護者)の意見・要望が聞き出せていない」等が中心で、課題もその解消に努めることが大半をしめることが多い。
    しかし、2回目以降は、収集された情報の何が課題かを見極めながら、虐待の解消を目指していくことになる。D票の項目ごとに虐待解消に向けた対応課題を抽出するための□のチェック欄があるので、会議を行いながら、計画書(2)E票の場合の「課題」については、目標設定とともに、その課題を解決していくことが、虐待の直接あるいは間接的な要因を消去していくことになると考えられる。

【対応評価票F票

  • 初動期以降、すべての計画を作成した後は、必ず評価期間までの対応について、課題ごとに評価を行い、個別に計画の見直しの必要性を判断する。その結果、全体の方針に、変更を行う必要があるかなどを、「今後の対応」欄1.の「虐待対応支援の終結」まで、繰り返すことになる。評価を繰り返すなかで、具体的にはなかなか被虐待高齢者あるいは虐待者(養護者)が意見や気持ちを言わないのは「なぜか」等、そのたびにD票に戻りながら、計画の課題や目標の設定に修正をかけていくことになる。特に個別の項目とともに「全体のまとめ」「家族関係」「その他」の記載にも留意しながら評価を行うと有効である。


帳票活用のポイント

ここでは、帳票活用のポイントと帳票記入のポイントを説明する。

  1. 帳票はツールである
    帳票は、虐待の一連の流れを構造化し、可視化する道具である。帳票を埋めることが目的でないので、空欄があってもよい。
  2. 明確な情報と明確でない情報を整理していく
    明確でない情報は「不明」という事実を記入する。不明の場合は、その情報を「誰が、どのように、いつまで」確認するか自体が支援計画の課題となる。
  3. 帳票を継続して使用していく
    前述のように帳票は虐待対応の流れに即して通報受理→事実確認→コアメンバー会議→個別ケース会議と流れていく。同じ帳票をどの段階でも使い、新たな情報や決定を追加していくものである。また、必要な場合は帳票を更新することになる。
  4. 帳票とは別に会議等の資料を作る必要はない
    帳票は、通報受理後の行政との協議、関係機関との連絡調整、コアメンバー会議や個別ケース会議資料や会議記録となるものであり、同じものを使うことで情報の迅速な伝達と管理が可能となり、業務の整理、軽減が可能となる。
  5. 帳票を個人作業にしない
    帳票作成は、基本的には個人作業ではなく、地域包括支援センターで案を作成するが、完成は行政との協議の場で行うようにする。
  6. 帳票は会議録である
    帳票のうちE票F票は会議録であるので、原案の作成を誰が担当するかにかかわらず、会議の結果を必ず記入するようにする。